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泣き崩れる男

結婚式場の教会で花嫁を略奪された男。

『これは悪夢だ、そうだ夢にちがいない』

彼はパニックになっている自分を奮い立たせるように起き上がった。教会の事務的な支払いや手続きをしなければいけない。ウエデングドレスやタキシードのレンタル料も払わなければいけない。目先にある当面の作業に彼は取り掛かった。気持ちをしっかり持つよう自分に言い聞かせながら。男は女性と違って、こういうときは妙に冷静になるときがある。感情は破綻しているが、彼の性格だろうか、周りに迷惑かけたくないという誠実さが働く。

しかし、その誠実さに火をそそぐ事件が起きる。
教会の待合室に戻った彼は、あの男が持ってきた花束を見た。その中に1枚のカード。
そのカードには、こう書いてあった。
『僕が今、ダスティン・ホフマンなれなかったら、僕の人生は終わりだ』

『卒業』という映画、その映画の通りに仕組まれたと彼は思った・・・・
そして冷静さを失った彼は、その場でくやしくて泣き崩れた。

占い館に来た彼も、そのシーンの話になると泣き崩れた。よほどくやしかったのだろう。大の大人の男がこんなに泣き崩れるのを私は見たことない・。

4~5分は会話をすることができなかった。





映画『卒業』

60年代後半から70年代前半にヒットした映画である。
私は映画を見たことはないが、こんなあらすじだったと思う。

主演はダスティン・ホフマン。サイモン&ガーファンクル『サウンド・オブ・サイレンス』のメロディに乗りながら、この映画は一世を風靡した。

結婚式に花嫁をさらう、劇的なシーン。『女性が望んでない結婚式に突如現れた愛する男』
このリアルなシーンは当事の青春を過した人間にはバイブルのような作品であった。

本気で愛しているのなら、勇気を出して彼女を奪え。これが本物の『愛』みたいな。
結婚式に花嫁を奪うとは前代未聞で、当事は話題となった。

彼の物語は、まるでこの『卒業』を地で行く物語だった。

卒業では、花嫁と花嫁を奪った男をヒーロー扱いしているが、とんだヒーロー伝説である。いかにも結婚式という大舞台に、ぎりぎりのところで確かめ合う本物の愛。みたいに描き出されているが、これは常識を外れた間違いである。

奪われた男はどうなる。
彼の方が、奪った男より彼女を愛していた。

映画では、劇的に結ばれた二人が苦難の末、ハッピーエンドに終わるかもしれない。

残された男は・・・・

これから苦難の道が始まる。

一生消えることのない傷を背負いながら。

映画はその後を語ってない。ハッピーエンドにしてしまえばそれで終わりだからだ。

ならば、私が語ろう。彼の苦難の人生を。





その男の姿を見た僕は、ああ、次の結婚式を挙げるカップルの友人が見えているのだなと思った。

そのときである。

彼女は突然その男の方へ向かって走り出した。

一瞬の出来事に、いやな予感が走った。

『彼女は僕に内緒で友人を呼んだんだ・・・』そう思うよう努力した・・・・

『ちょっと、話をしてくる』。・・と彼女は僕にそう告げて、その男と二人で外に出て行った。

僕はあっけにとられて、二人が外に出て行く様子を見ていた。人は予想をしないパニックに陥ると、何もできないのかもしれない。

数分のパニック症候群を向かえた僕は、ふと我に帰り、胸騒ぎとともに彼女を探した。

彼女は駐車場の車の中で、その男と話している。

僕は必死に彼女を車から降りるよう諭した。

『何やっている、さあ車から早く降りなさい』・・

彼女は、『もう少しだけ話をさせて』・・車から降りる様子はない。

そして僕は、殺意を抱く光景を見た。

その男の『いかにも自分が勝った』という目つきと、鼻で笑っているのを見たときだ。

『この男に彼女を渡してはならない』と僕は激怒の感情で彼女の手を引っ張り強引に車から彼女を引きずり出そうとした。

車から引きずり出そうとする僕と、それを拒む彼女。その押し問答が2~3分続いた。

そして、彼女の口から悪魔の言葉を聞いた。

『だって、好きになったものはどうしょうもないじゃない!』
・ ・・・その言葉を聞いた僕は、力が抜けて、へなへなとその場に倒れこむように座った。

車は発進する・・・・

カーブの急ブレーキをかけた、『キーー』という金属音が僕の心を引き裂いた。

彼女は僕の前から消えてしまった・・・・

ウエディングドレスを着たままで・・・・・・。

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ステンドグラスの陽光が眩しい教会。
ついに僕たちは結婚式をあげる。僕はこの日をどんなに待ちわびたことか。

マンションを購入したおかげで、結婚式はジミコンになった。親族だけでも呼ぼうとしたけど、友達も呼べないのなら、二人だけで挙げようという彼女の提案で二人だけで式を挙げることとした。

二人で歩く赤いじゅうたんのバージンロード、その先には神父さんがいる。
心ときめいて嬉しいはずなのに、彼女は顔色が悪い。不機嫌そうに仕方なくこの場に身を置いている気持ちがひしひしと伝わる。

彼女は覚悟を決めた。4年付き合った彼と結ばれることが私の幸せだと。彼を夫としては申し分ない。むしろ私にとってできすぎた夫。これからは彼だけのために尽くそうと心に決めて、今日の式に臨まなければいけないが、あの男のことが忘れられない。

誓いの言葉。
指輪の交換。。。そして誓いのキス。。

教会の結婚式の一連のセレモニーが無事に終わった。

僕は、やっと終わったと安堵感でいっぱいだった。彼女も式の最後は優しい目で笑顔を僕に降り注いでくれた。

僕は幸せだ。

もう何があっても彼女を離さないと誓った。

式が終わり、教会の出口に出た。次の式のための若い新郎新婦が待っている。
ああ、次はこの人たちが式をあげるのだな、という気持ちで微笑ましくなった。

が・・・その目線の先に男が立っていた

花束を持って。
続く。





結婚前夜、彼女はその男とラブホにいた。男の風貌はサングラスがよく似合うイケ面。悪と危険な香がする男である。彼とはまったく正反対の男。仕事は金の先物取引、聞こえはいいが、人様の金を転がして儲けているねずみこうのような商売である。普通のサラリーマンより、金回りはよく、車はアメ車のムスタング、腕時計はロレックス。月100万以上は稼いでいるだろう。そんな男だから、当然女にモテル。彼女以外に何人も女の影がいた。彼女は並み居る強豪の中から、その男をやっと射止めたという思いがあった。嫉妬に苦しみながら、手に入れた男、愛憎の虜になった男である。そして、今は彼よりその男の方を彼女は好きになっていた。彼の誠実さ、優しさを飛び越えた女のサガである。そんな気持ちになった自分を彼女は責めた。ここ数か月は夜も眠れない日が続く。自分はなんて悪い女だ。親、友達、親戚公認の彼を裏切るなんて、とても地元では生きていけないわ。これは小悪魔を通り越して悪魔の女。彼女は悪夢にうなされた。それでも、好きになった女のサガは危険な
道を選ぶ。『明日、結婚式だろ。今日で君とも終わりか』男が発した言葉に彼女は激怒と動揺をあらわにした。男にしてみれば、俺なんかより彼と一緒になった方がずっと幸せになれると親心からはっした言葉である。彼女は今は精神的にまいっている。ヒスが頂点に達していくのに重く感じた男はなだめ透かしながら、半ば強引に彼女を帰した。ホテルを出た彼女は半狂乱、男に捨てられた惨めな女像であった。その様子をホテルの小部屋で見ていた男は、ある作戦を考えていた。○○明日合おぜ。やはり君を幸せにできる男は俺かな?不適に笑いながら、自信たっぷりにタバコをくわえた。


(理想)
叶わぬ相手。
片思いや憧れの人。
そして振られた相手。

叶わぬ相手に人は理想を抱きたがる。
執着と固執。
叶わぬ相手による幻想。

幻想は現実とは違う心理が働く。それを『好き』という言葉に集約される。
『好き』になったものはしょうがない。『好き』には理由はないのだ。
相手に彼女がいようが、不倫の相手だろうが、人はひとたび人を『好き』になってしまうと、精神のコントロールができない。大人の価値観や、社会通念や道徳は通用しない。
『好き』とい思いだけで、人は行動する。

叶わぬものを欲しがっているときが、一番の恋心かもしれない。手にはいってしまうと。
『ええ。。こんなものだったの』と100年の恋もさめる現象に見舞われることがある。よく復縁を果したカップルがまた別れる現象がそれである。現実を見て、初めて冷静に相手を見ることができるのかもしれない。

自分に冷たく、拒否をする相手。その相手に対して『好き』と反応する自分。それはなんなのでしょう。逃げるものを追う心理。あるいは振られたというやるせないプライド。自分が人に嫌われたという屈辱感。過ちや誤解をときたいという心理。平和な『好き』より人は危機の『好き』の方に反面的に闘志を燃やすのかもしれない。

(キープ)
キープは理想と違って、安定した心理である。
安定には落とし穴があって、『つまらない』のである。
劇的なシュチュエーションを起すわけでもなく、刺激がないのである。
若い子は、退屈な平凡な日々に耐えられない。退屈な恋はしたくないのかもしれない。

彼は、常に優しく自分の言う事は何でも聞いてくれる。慣れ親しんだ女性はわがままになる。恋愛は他人とする行為だが、親しい仲にも礼儀という作法がなくなる。他人なのに、身内を越えた領域になるのが恋愛である。
そういう状態になると、人はまた不安になる。
『この人でいいのかしら』という不安である。

シンデレラを夢見る子は、平凡な退屈な日々からの脱却である。
日常から非日常へ自分を連れて行ってくれる王子様を求める。

つまらない仕事、あくせくした生活。なんと私は不幸な環境にいるのだろう。こんな生活を私は望んでいない。と少女たちは、もっと違う世界の幻想を描く。自分を救ってくれる白馬の騎士、星の王子様の出現を夢見るのである。



そして、彼女には幻想を抱かせる男が現れた。






『男がいる』。お父さんからの言葉は、悪魔の囁きに聞こえた。
『そんなばかな』僕は気が動転して、そのあとお父さんが何を言ったか覚えていない。
ただその言葉は『ウソだ・・・』としか思えなかった。

帰りの道中、自分はどういう経路で家までたどり着いたか覚えていない。酔っ払いが記憶を失くして家にたどり着く状態と同じだった。

家に着くと、母が、『結婚式もうすぐだね、準備はもう終わったの』という言葉とともに我に返った。

『そうだ、来週僕は彼女と結婚するんだ』。
こんなことで落ち込んでられない。

彼女は21歳でまだ若い、あれだけ可愛い子なら、他の男がちょっかい出すのもおかしくない。結婚してしまえば、名実とともに僕のものになる。間違いなく、無事に式が済ませるようにしないと。

彼は何が何でも結婚式をあげるんだと決意した。

結婚式の二日前、僕は彼女と会った。

結婚式は二人で挙げるのだが、親、親戚、友達、会社、には当日結婚式を挙げることを通達してある。らんどりは全部済ませ、後は結婚式を迎えるだけであった。

『結婚式・・・後に延ばすことできない・・?』耳を疑う言葉が彼女から出た。
やはり・・くう・・彼女には陰に僕とは違う男がいるのだ・・と、信じられないが初めて悟った。お父さんの話を聞いてなかったら、僕は動揺していただろう。

『それは無理だよ。もうみんなには知らせてあるし、新婚旅行の飛行機の切符も買ってあるし、ホテルの予約も・・それに教会の神父さんにも悪い。会社や友達からも祝福もらっているし、親も親戚も二人の幸せを願っているんだよ。それで結婚式挙げなかったら、みんなに悪いし、これはもう二人だけの問題ではないのだよ』

彼女は下を向いて、乗り気がないようなそぶりでしぶしぶ了解した。というより僕がやや強引にそうさせた。
大丈夫だ。結婚式させ済ませば、彼女は悪い夢から覚めるだろう。後は僕が幸せにする。

彼はやるせない気持ちと、嫉妬心と対峙しながら、彼女を納得させる方向にこぎつけた。






恋愛から結婚までの道のりはすこぶる順調だった。

このままの幸せでいいのか、でもいつまでも続くと思った。

結婚資金の目安がついた僕たちは、新居であるマンションの購入に踏み切った。

横浜の郊外。白いビレッジの建物、50件ぐらい方々を見て周ってここに決めた。

頭金100万、月々のローン7万。僕だけの給料では難しいけど、子供が出来るまで当面共稼ぎ、彼女もそれは納得してくれた。

結婚式まであと二ヶ月、マンション購入に大半の費用を当てたので、小さな教会で二人だけの結婚式を挙げることにした。式まであと二ヶ月。僕はその日が来るのを待ち通しかった。もうすぐ彼女との新婚生活が始まると。

そのころからである・・・・

彼女の様子が変になったのは、

デートがキャンセルするようになり、電話にもなかなか出ない日が続いた。自宅に電話をしても、娘はまだ帰ってきてないという母親からの返事。

たまに会うデートも、彼女は何かよそよそしい。
ラブホテルに泊まっても、体を触らせるのを何故か拒むようになった。

マルッジブルーかな?

結婚前の女性が陥る心理。僕はそうとらえていた。そのうち落ち着くだろう。今は彼女の気持ちを考慮してあげよう。

教会での結婚式まで、あと一週間と迫った頃、僕は彼女の父親に呼び出された。

『娘には男がいる』父親の発した言葉に僕は衝撃を受けた。・・・






大学を卒業後、僕はある商社に勤めた。
彼女がいるおかげで有意義な大学生活を送れた。恋愛と学業を僕は充実させたと思う。こんなに充実させた青春は二度と訪れないだろう。同じ年代のどの男より僕は幸せだった。友達には『いいな~オマエ、あんな可愛い子と付き合えて・・』と言われるくらい自慢の彼女であった。

彼女も高校卒業後、横浜の雑貨商に就職した。本来は大学にいく予定だったが家庭の金銭的な事情で大学を断念した。

お互いの両親にも紹介し合い、何度もそれぞれの実家に遊びに行き、親公認の仲であった。
会社の帰りに、彼女の家に夕食を呼ばれることもたびたびで、彼女のお父さんとも男同士の交友を深めていった。お父さんとは趣味が一緒の将棋で、よくお手合わせをさせていたきその後はビールを飲みながら男談義に講じた。

ここまできたら、もう彼女と結婚するしかない。

親公認。誰も二人の結婚を妨げるものはない。

僕も彼女も学校を卒業後は、結婚資金を貯めるために働いた。

そして週1回のデート。普段仕事でバリバリ働いているので日曜日がくるのが待ち遠しかった。学生時代と違って、そんなにしょっちゅう会えないけど、何の不安も心配もなかった。

そして2年後。結婚資金にメドが立ち、
僕は彼女にプロポーズをした。
思い出の地、あの馬車道で。


彼女に出会ったのは、僕が大学2年のとき、大学の学園祭で知り合った。彼女は僕の高校の後輩でクラスの同級生たちと大学の学園祭に来ていた。

彼女に僕は一目ぼれをしてしまった。周るにいる女の子たちより彼女はひときわ可愛く輝いていた。

遊びなれてない僕は、シャイな部分があってとても声をかける勇気のない男だが、彼女だけには違った。信じられないほど自ら彼女に話しかけ、行動をとっていた。短い時間だったけど10年も傍にいるような感覚で二人は打ち解けた。こんなに女の子と楽しく会話ができたのは生まれて初めてであった。

学園祭が終わった後でも、僕は彼女との感触が忘れられなくて、彼女に何度もアタックした。当事はケイタイなどなく、もっぱら公衆電話だった。

そして奇跡が起きた。

彼女が僕の告白を受け入れてくれたのだ。

やったー!やったー!と僕は天にも昇る勢いで、横浜の馬車道の歩道を飛び跳ねていた。通行人には、頭がおかしくなったのではないかと誤解された。その冷たい視線はよそにして、僕はウキウキと、横浜の町を闊歩した。今でも忘れない。僕が始めて告白した、あの馬車道の公衆電話ボックスを。。。

デートはお互いが学生なので時間があるときには毎日のように会っていた。

待ち合わせ場所は、横浜の阪東橋。メジャーではなくマイナーの場所が僕のお気に入りだった。その場所を拠点に横浜の繁華街に消えていく。伊勢崎町・山下公園・中華街・港の見える丘公園、当事はミナト未来はまだ構想中で工事にとりかかろうとしている頃だった。
横浜の若者のスポツトは高島屋のある駅前の西口がメィンだったが、何故か僕は人通りの多い場所より、静かな野毛山が好きだった。無料で入れる動物園、レッサーパンダの前で二人は初めてキスをした。

相思相愛の仲、こんな形容詞がぴったりの二人だった。